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音をデータにして視覚化する小学校STEAM授業:センサーとプログラミングを活用した実践例

Tags: 音, センサー, プログラミング, データ活用, 視覚化, STEAM教育

はじめに:見えない「音」を「見る」面白さ

私たちの周りには様々な音が満ち溢れています。話し声、音楽、自然の音、機械の音。これらの音は耳で聞くことはできますが、目で見ることはできません。しかし、もし音の「大きさ」や「変化」をデータとして捉え、それを色や形、動きに変えて「視覚化」できたら、子どもたちの探究心はどのように刺激されるでしょうか。

音の視覚化は、科学(音の性質、センサー技術)、技術(データ収集、計測)、工学(システム設計)、アート(表現方法)、そして数学(データ分析)といった多様な要素が融合する、まさにSTEAM教育にぴったりのテーマです。本記事では、小学校における音の視覚化をテーマにしたSTEAM授業の実践方法について、センサーとプログラミングの活用を中心に具体的にご紹介します。

音をデータとして捉える

音を目に見える形にするためには、まず音を数値化する必要があります。これは、音の「大きさ」(音圧レベル)をセンサーを使って電気信号に変換し、さらにその信号をコンピューターが扱える数値データに変換するプロセスです。

小学校のSTEAM教育では、専門的な音響測定器を使う必要はありません。教育用の簡単な音センサーモジュールと、プログラミング可能なマイコンボード(例えばmicro:bitなど)を組み合わせることで、手軽に音のデータを収集することができます。センサーは、周囲の音の大きさに応じて電圧が変化する仕組みになっており、マイコンボードはその電圧を読み取ってデジタル値に変換します。このデジタル値が、音の大きさを示す「データ」となります。

必要なツールと基本的な準備

音のデータ収集と視覚化には、主に以下のツールがあると実践しやすいでしょう。

準備としては、まずマイコンボードの開発環境をコンピューターにセットアップします。micro:bitの場合は、ウェブブラウザ上で動作する「MakeCode」が便利です。次に、音センサーモジュールをマイコンボードに正しく接続します。接続方法については、センサーモジュールの仕様や使用するマイコンボードのマニュアルを参照してください。多くの場合、電源(VCC)、GND、データ出力(アナログまたはI2C)の数本のピンを接続するだけです。

実践ステップと授業アイデア

音の視覚化をテーマにしたSTEAM授業は、段階的に進めることで子どもたちの理解と探究を深めることができます。

ステップ1:音の大きさを測ってみる

ステップ2:データを処理し、条件に応じた反応を作る

ステップ3:データを視覚的に表現する

授業アイデアの広がり

評価のヒント

音の視覚化STEAM活動における評価は、最終的に完成した作品だけでなく、探究のプロセスそのものに焦点を当てることが重要です。

これらの要素を総合的に評価するために、子どもたちの活動中の様子を写真や動画で記録したり、作成したプログラムファイルを保存したり、作品シートやポートフォリオを活用したりすることが有効です。

まとめ

見えない音をデータとして捉え、視覚化するSTEAM教育は、子どもたちに身の回りの現象を「データの視点」で見つめ直す機会を与えます。センサーで物理世界を数値化し、プログラミングでそのデータを加工・分析し、さらにアートの力で表現するという一連の活動は、科学、技術、工学、アート、数学の各分野の学びを有機的に結びつけます。

導入にあたっては、まずは簡単な音量測定から始め、徐々にデータ処理や多様な視覚表現へとステップアップしていくことがおすすめです。特別な専門知識がなくても、教育用ツールを活用することで、子どもたちの好奇心を引き出し、探究的な学びを深めることができるでしょう。ぜひ、皆様の学校でも音の視覚化に挑戦してみてください。