学校とSTEAM連携ナビ

小学校における異学年合同STEAM授業:計画から実施までの具体的なステップ

Tags: 異学年連携, 小学校, STEAM教育, 授業実践, 計画

はじめに:異学年連携で生まれるSTEAM教育の可能性

小学校において、異なる学年の児童が一緒に学ぶ「異学年交流」は、社会性や協調性を育む貴重な機会です。この異学年連携をSTEAM教育に取り入れることで、さらに多様な学びの可能性が広がります。高学年の児童はリーダーシップや教えることの難しさを学び、低学年の児童は年上の児童から刺激を受けたり、複雑な課題に触れたりすることができます。また、異なる視点や知識を持つ児童が協力することで、より創造的で深みのある探究活動が期待できます。

しかし、異学年合同での授業実践には、計画や運営において特有の課題が存在します。この記事では、小学校で異学年合同のSTEAM授業を計画し、効果的に実施するための具体的なステップとポイントについて解説します。

異学年合同STEAM授業の計画ステップ

異学年合同のSTEAM授業を成功させるためには、事前の周到な計画が不可欠です。以下のステップを参考にしてください。

1. テーマと目標の設定

まず、異学年の児童が共通して興味を持ちやすく、かつ各学年の発達段階に応じた学びが得られるテーマを選定します。「地域の課題解決」「未来の〇〇(例:遊具、まち)を考える」「身近な自然を探究する」など、具体的な問いや課題に基づいたテーマが適しています。

次に、このテーマを通して、各学年にどのような資質・能力を育むか、具体的な目標を設定します。例えば、「高学年はプログラミングを用いて解決策を形にするスキルを習得する」「低学年は観察力とアイデアを出す力を養う」「異学年で協力して課題に取り組む姿勢を身につける」など、学年ごとの目標と合同での目標を明確にします。

2. 活動内容の検討と役割分担

テーマと目標に基づき、具体的な活動内容を検討します。活動プロセスの中で、各学年の児童がどのような役割を担うかを設計することが重要です。

活動内容を細分化し、異学年の児童が協力して一つの成果物や発表を作り上げるような流れを設計します。例えば、低学年がアイデアやデザインを考え、高学年がそれを基にデジタルツールで表現するといった連携が考えられます。

3. グループ編成と時間割の調整

異学年合同で活動するグループを編成します。単に人数を均等にするだけでなく、各グループにバランスよく高学年のリーダー役となる児童や、特定のスキルを持つ児童を配置するなどの工夫が必要です。グループ内の人数は、協働がしやすく、かつ教員の目が届きやすい人数(4〜6名程度)が望ましいでしょう。

また、複数の学年の時間割を調整し、合同で活動できる時間を確保します。一斉に集まるのが難しい場合は、複数の時間帯に分けて実施する、オンラインツールを活用して非同期で連携するなど、柔軟な方法を検討します。体育館や多目的室など、広い場所を確保できると、グループ活動がしやすくなります。

4. 必要な教材・ツールの準備

選定した活動内容に必要な教材やツールを準備します。身近な素材から、タブレット端末、プログラミングツール(Scratch、micro:bitなど)、デジタルファブリケーションツール(3Dプリンタなど)まで、テーマに応じて多様なものを活用できます。特にデジタルツールを用いる場合は、事前に児童が基本的な操作に慣れておく時間を設けるか、操作が得意な児童がサポートする体制を計画に含めます。

異学年合同STEAM授業の実施ステップ

計画に基づき、実際の授業を実施する際のポイントです。

1. 導入と共通理解の形成

授業の冒頭で、本日の活動の目的や全体の流れ、異学年で協力することの意義などを全児童に分かりやすく伝えます。アイスブレイクを取り入れることで、学年を超えた交流を促し、心理的なハードルを下げることができます。異学年合同の活動では、特に共通の目標や課題をしっかりと共有することが、協力して取り組む動機付けとなります。

2. グループ活動の進行

各グループに分かれて活動を開始します。教員は巡回しながら、グループ内のコミュニケーションを促し、困っている児童がいないか、計画通りに進んでいるかなどを確認します。高学年の児童が低学年の児童に教えたり、サポートしたりする様子を認め、励ます声かけを積極的に行います。

活動が停滞しているグループに対しては、ヒントを与えたり、役割分担の見直しを提案したりするなど、個別のサポートを行います。また、安全に留意し、特に工具やデジタル機器を使用する際には適切な指導を行います。

3. 成果の共有と振り返り

活動時間内にグループでまとめた成果を発表したり、共有したりする時間を設けます。発表形式は、口頭発表だけでなく、作成した作品の展示、ポスターセッション、動画発表など、児童の表現力を引き出す多様な方法が考えられます。

発表後には、活動全体や異学年での協力について振り返りを行います。「工夫した点」「難しかった点」「友達から学んだこと」「次に活かしたいこと」などをグループや全体で共有することで、学びを定着させ、次に繋げることができます。

異学年合同STEAM授業を成功させるための留意点

まとめ:異学年連携STEAMが拓く新しい学びの場

異学年合同でSTEAM教育に取り組むことは、計画や実施に工夫が必要ですが、それ以上に児童にとって多くの学びをもたらす可能性を秘めています。学年を超えた交流の中で、知識やスキルを伝え合ったり、異なる視点に触れたりすることで、児童は主体的に学び、協働して課題を解決する力を育んでいきます。

この記事でご紹介した計画と実施のステップ、そして留意点が、小学校における異学年合同STEAM授業の実現に向けた一助となれば幸いです。ぜひ、先生方の学校でも異学年連携によるSTEAM教育の可能性を探究してみてください。