光る・動く仕組みを探究!小学校STEAM教育で始める簡単な回路工作
小学校でのSTEAM教育において、「ものづくり」は子どもたちの興味関心を引き出す有効なアプローチの一つです。中でも、身の回りの電気製品に共通する「回路」の仕組みを学ぶ回路工作は、科学技術の原理を理解し、創造性を育む上で大きな可能性を秘めています。しかし、「難しそう」「安全面が心配」といった理由から、導入に踏み切れない先生方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、小学校でも安全かつ手軽に始められる簡単な回路工作に焦点を当て、子どもたちが「光る」「動く」といった現象を通して電気の仕組みを探究するための具体的な実践方法をご紹介します。
なぜ小学校で回路工作を学ぶのか
小学校段階で回路工作に取り組むことは、以下のような点でSTEAM教育を推進する上で有益と考えられます。
- 身近な科学技術への興味・関心を育む: 日常生活に欠かせない電気や電子機器がどのような仕組みで動いているのか、基本的な原理に触れることで、子どもたちの知的好奇心を刺激します。
- 科学的な概念の理解を深める: 電気の通り道である「回路」の概念、直列・並列といった繋ぎ方による違い、電池の向きや部品の役割などを、実際に手を動かしながら体験的に学ぶことができます。
- 工学的な思考力を養う: 目的(光らせる、動かす)のために部品を選び、組み立て、問題があれば原因を探して改善するといった、ものづくりにおける一連のプロセスを経験します。
- 創造性と表現力を育む: 回路を組み込んだ作品の外装や機能について、図工や他の教科と連携しながら自由に発想し、形にすることで、子どもたちの創造性と表現力を引き出します。
- 問題解決能力と粘り強さを培う: 回路が上手く繋がらない、期待通りに動かないといった問題に直面した際に、試行錯誤しながら解決策を見つけていく過程で、粘り強さや論理的な思考力が育まれます。
小学校で始める簡単な回路工作:準備するもの
大掛かりな機材や専門知識は不要です。身近な部品や、学校でも比較的入手しやすいものを使って始めることができます。
- 電源: 乾電池(単3や単4)、乾電池ボックス
- 光る部品: 豆電球(豆電球ソケットも)、LED(砲弾型LEDや帽子型LEDなど抵抗内蔵タイプや、抵抗を別途用意)、LEDホルダー
- 動く部品: 小型モーター、モーターホルダー、プロペラや車輪などモーターの軸に取り付けるもの
- 繋ぐ部品: 導線(被覆を剥く必要のないクリップ付きコードが便利)、ミノムシクリップ、アルミホイルや導電性シートなど身近な導電体
- スイッチ: スライドスイッチ、タクトスイッチ、身近な素材(アルミホイルなど)を使った手作りスイッチ
- その他: 段ボール、紙コップ、ペットボトルなどの工作材料、ハサミ、セロハンテープ、ビニールテープ、木工用ボンド
安全上の配慮: * はんだ付けは小学校段階では必須ではありません。コネクタやクリップ付きの部品、導電性テープなどを活用することで、安全に配線作業ができます。 * ショート(短い導線などで電池の両極を直接繋いでしまうこと)は電池が熱くなる原因になります。短い導線のみを単体で扱わせない、電池ボックスを使用する、といった配慮が必要です。 * LEDは極性(電気を流す向き)があります。間違えると点灯しませんが、すぐに壊れるわけではないものが多いため、向きを変えて試す活動も探究に繋がります。
実践例:光るおもちゃを作ろう
豆電球やLEDを使って、ランプや懐中電灯、光る飾りなどを作ってみましょう。
- 基本的な回路を理解する: 乾電池、豆電球、導線を直列に繋いだ簡単な回路を提示し、電気が電池のプラス極から出て、豆電球を通ってマイナス極に戻る「電気の通り道(回路)」があることを説明します。
- 部品を繋いで光らせてみる: 乾電池ボックスに乾電池をセットし、乾電池ボックスのコードと豆電球ソケット、導線、スイッチなどを順に繋いで、豆電球が光ることを確認します。LEDを使う場合は極性に注意が必要です。
- 簡単なスイッチを組み込む: 導線の一部をアルミホイルで挟んで手作りスイッチにしたり、スライドスイッチを組み込んだりして、好きな時にオンオフできるようにします。
- 工作材料で外装を作る: 光らせたいものの形に合わせて段ボールや紙コップなどを使い、外装をデザイン・制作します。回路や電池ボックスが収まるように工夫します。
- 回路を組み込む: 作成した外装の中に回路を組み込み、豆電球やLEDが外に出るように固定します。
探究のヒント: * 豆電球とLEDの違い(明るさ、消費電力など)を比較してみる。 * 乾電池の数を増やしたり、並列に繋いだりした場合に明るさがどう変わるか実験してみる。 * 光の色が変わるLED(フルカラーLED)を使ってみる。
実践例:動くおもちゃを作ろう
小型モーターを使って、扇風機や簡単な車、動く人形などを作ってみましょう。
- 基本的な回路を理解する: 乾電池、モーター、導線を繋いだ回路を提示し、電気が流れるとモーターが回ることを体験します。豆電球の回路との違い(電気が「光」ではなく「動き」に変わる)を確認します。
- 部品を繋いで動かしてみる: 乾電池ボックスとモーターを繋いで、モーターが回ることを確認します。モーターにプロペラや車輪などを付けてみます。
- 簡単なスイッチを組み込む: 光るおもちゃと同様にスイッチを組み込みます。
- 工作材料で外装や機構を作る: モーターの回転を利用して動かしたいものの形や仕組みを考え、段ボールなどで制作します。車輪の取り付け方やプロペラの固定方法などを工夫します。
- 回路を組み込む: 外装の中に回路とモーターを組み込み、モーターの軸が外部に出るように固定します。プロペラや車輪を取り付けます。
探究のヒント: * モーターの軸に付けるものの形や重さを変えると動き方がどう変わるか実験する。 * ギアや輪ゴムなどを使って、モーターの回転を別の動き(直線運動など)に変える仕組みを考えてみる。 * 複数のモーターを使って、より複雑な動きをするものを作ってみる。
他教科との連携と評価のヒント
回路工作は、理科、図工を中心に、算数や国語、総合的な学習の時間など、様々な教科と連携させることが可能です。
- 理科: 電気の単元と結びつけ、回路図の書き方や、並列・直列回路の特性を実験を通して学びます。
- 図工: 作品の外装デザインや、モーターやLEDを組み込む構造について、創造的に表現する活動として展開できます。
- 算数: 乾電池の電圧や電流(簡易的にテスターで測るなど)、抵抗値といった量を扱ったり、回路図や設計図を正確に書く際に図形や空間認識の要素を取り入れたりできます。
- 国語: 作ったものの仕組みや工夫した点について説明する文章を書いたり、友達にプレゼンテーションしたりする活動を取り入れることで、表現力や伝達力を養います。
- 総合的な学習の時間: 身近な困りごとを解決する道具を回路工作で制作するなど、探究的なテーマ設定と連携させることができます。
評価においては、完成品の見た目や動作だけでなく、以下の点に着目することが重要です。
- 科学技術への関心: 積極的に活動に取り組んでいるか、電気の仕組みについて質問したり調べたりしているか。
- 探究の過程: どのようにアイデアを出し、試行錯誤し、問題解決に取り組んだか。失敗から何を学び、次に活かそうとしているか。
- 創造性と工夫: 作品のデザインや機能にどのような独自のアイデアや工夫が見られるか。
- 知識・技能の習得: 簡単な回路を正しく組めているか、部品の役割を理解しているか。
- 協働: 友達と協力して課題に取り組めているか、自分の考えを伝え、相手の意見を聞こうとしているか。
これらの評価は、観察記録、子どもたちの言葉での説明、ポートフォリオ(回路図のメモ、写真、振り返りシートなど)を活用して行うことができます。
まとめ
小学校における簡単な回路工作は、子どもたちが科学技術の原理を体験的に学び、ものづくりの楽しさを知り、創造性や問題解決能力を育むための有効な手段です。高価な専門ツールがなくても、身近な部品を安全に扱う工夫をすることで、十分に取り組むことができます。
ぜひ、本記事でご紹介した内容を参考に、子どもたちと一緒に「光る」「動く」といった驚きや発見に満ちた回路工作に挑戦してみてください。子どもたちの「なぜだろう?」「もっとこうしたい!」という探究心をきっと引き出すことができるはずです。