小学校STEAM教育における成果発表の工夫:子どもたちの学びを効果的に伝える方法
STEAM教育では、子どもたちが探究し、創造したプロセスや成果を発表する機会を持つことが非常に重要です。成果発表は、子どもたちの学びを可視化し、自己肯定感を育むとともに、他者と共有し、新たな探究への意欲を高めるための重要なステップとなります。しかし、小学校の現場では、発表の時間をどのように確保するか、どのような形式が良いか、評価にどう繋げるかなど、具体的な方法に悩む先生方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、小学校におけるSTEAM教育の成果発表について、その目的を改めて整理し、多様な発表形式とその実践に向けた具体的なヒントをご紹介します。
STEAM教育における成果発表の目的
成果発表は単に「作ったものを見せる」ことだけではありません。そこには様々な教育的な目的が含まれています。
- 学びの定着と深化: 自分の言葉で説明したり、他者に伝えるために構成を考えたりする過程で、自身の学びがより深く定着します。
- 自己肯定感の向上: 自分の探究活動や創造物を発表し、認められることで、自信や達成感を得られます。
- 他者との共有と協働: 自分の考えや成果を共有することで、他者の視点を取り入れ、新たな気づきや学びを得られます。協働で取り組んだ場合は、チームでの成果を共有する喜びを分かち合えます。
- 振り返りと次の探究への橋渡し: 発表の準備や質疑応答を通して、活動全体を振り返り、うまくいった点や課題が見えてきます。これが次の探究活動への動機付けとなります。
- 学びの可視化: 子どもたちの目に見えない思考プロセスや工夫を具体的に示すことで、保護者や地域の方々にも活動への理解を深めていただけます。
小学校で取り組める成果発表の多様な形式
成果発表には様々な形式があります。児童の発達段階や単元の内容、確保できる時間や場所に応じて、最適な形式を選ぶことが大切です。
-
展示形式:
- 作品展示: 作ったもの、描いたものなどを展示します。単に並べるだけでなく、工夫した点や苦労した点などをまとめたキャプションや説明文を添えると、より伝わりやすくなります。
- プロセス展示: 最終的な成果物だけでなく、探究の過程で生まれたスケッチ、試作品、データ、写真、メモなどを展示します。思考の足跡をたどることで、学びの深さを伝えることができます。模造紙や大型紙にまとめたり、ウェブサイト上で公開したりする方法も考えられます。
- ポスターセッション: 模造紙などに探究テーマ、活動内容、成果、考察などをまとめて発表します。展示しているポスターの前で、質問に答えたり、説明したりします。
-
発表形式:
- プレゼンテーション: スライド資料などを用い、聞き手に向けて口頭で発表します。構成を考えたり、分かりやすく伝える工夫をしたりするスキルが育まれます。ツールの使い方を学ぶ機会にもなります。
- デモンストレーション: 作ったものやプログラミングしたものの動きを実際に示しながら説明します。
- 授業内発表: 単元の終わりに、グループごとや個人で、授業時間内に簡単な発表を行います。発表時間を短く設定するなど工夫すれば、多くの児童が発表機会を持てます。
-
デジタル形式:
- ウェブサイト: Google Sitesなどの簡単なウェブサイト作成ツールを使って、活動内容や成果をまとめたウェブサイトを公開します。写真や動画を多く盛り込むことができます。
- 動画: 活動の様子や成果を短い動画にまとめます。タブレット端末の基本的な編集機能を使えば、手軽に作成できます。
- 電子書籍: 学習の記録や成果物を、電子書籍形式でまとめます。
-
パフォーマンス形式:
- 劇や寸劇: 科学的な原理や社会課題などをテーマに、短い劇で表現します。
- 音楽やダンス: 作曲した曲を発表したり、プログラミングで作った装置を使って音や光のパフォーマンスを行ったりします。
実践に向けた具体的なヒント
成果発表を効果的に行うためには、いくつかの準備や工夫が必要です。
- 発表の「ねらい」を共有する: 何のために発表するのか、発表を通して何を伝えたいのかを、活動を始める段階から子どもたちと共有しておきます。
- プロセスの記録を習慣化する: 活動中に写真や動画を撮ったり、気づいたことや工夫したことをメモしたり、スケッチを残したりすることを促します。これが発表準備の大きな助けとなります。学習ポートフォリオの活用も有効です。
- 伝える相手を意識させる: 誰に発表するのか(クラスメイト、他の学年の児童、先生、保護者、地域の方々など)によって、伝えるべき内容や表現方法が変わることを意識させます。
- 発表ツールの使い方をサポートする: スライド作成や簡単な動画編集など、発表に使うツールの基本的な使い方を教えたり、操作に困ったときにサポートできる体制を整えたりします。
- 構成のサポートをする: 特にプレゼンテーションやポスター発表の場合、「はじめに(問いやテーマ)」「活動内容」「工夫した点」「成果・結果」「分かったこと・これから」といった基本的な構成を例示するなど、まとめる際の枠組みを示してあげると、子どもたちは取り組みやすくなります。
- リハーサルや練習の機会を設ける: 本番に向けて、時間を計ったり、友達同士で見せ合ったりするリハーサルや練習の機会を設けると、自信を持って発表に臨めます。
- 質疑応答への備えを促す: 発表内容について質問される可能性があることを伝え、想定される質問に対する答えを考えておくように促します。
- 多様な評価の視点を持つ: 成果物だけでなく、探究のプロセス、協働の様子、発表の準備への取り組み、発表の分かりやすさなど、多様な視点から評価を行います。子どもたち自身や友達同士で評価し合う機会を設けることも有効です。
- 振り返りを丁寧に行う: 発表が終わった後に、「発表してみてどうだったか」「どんなところがうまく伝わったか」「難しかった点は何か」「次に活かしたいことは何か」などを振り返る時間を設けます。
まとめ
STEAM教育における成果発表は、子どもたちの学びを深め、表現力やコミュニケーション能力を育む貴重な機会です。展示、プレゼンテーション、デジタル活用など、多様な形式を工夫することで、限られた時間や場所の中でも、子どもたちが自信を持って学びを共有できる場を設けることが可能です。
先生方がこれらのヒントを参考に、子どもたちの豊かな探究活動の成果が輝くような発表の機会をデザインされることを願っています。